エピローグ〜そして兄弟は再会した〜(セイルの章)

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《E−1》

 俺がベッドに縛りつけられている間に、成人式祭は終わってしまった。
 お祭りを楽しむ暇もなかった。
 もう授業は開始している。俺はベッドから離れられず、学校へ行くことができない。
 リーダーが落第なんて、そんなかっこ悪いことは、避けたいのに。

 例のアジトは、国の警備団に踏み込まれ、全員お縄となった、らしい。

 隣町へ行く前日、俺とヨハネは、マルクに、手紙とゴアそして例の紫の宝石を持たせた。俺達が出発した日に、姉と共に城に行ってもらったのだ。だから、時間がかかっても、警備団が俺達を探しにくるのはわかる。しかし、隣町はともかく、アジトの場所まで来ることが出来た理由は、もう一人の通報者がいたからで……。

「チョーク、いつまで居るんだよ。どっか行けよ」
 警備団に捕まることなく、そして、さっぱりとした清潔な身だしなみをしたチョークは、もう大分前から俺の枕元には立っている。
「今生きてここにいるのは、誰のおかげですか」
 今までの言葉が嘘のような丁寧語で話しかけてくる。
 チョークは、貴族の子息、なんだそうだ。
 第一王子と姫様の指示で動いていた、二重スパイ。
 第二王子と思われる人物を見たという情報を聞き、真偽を確認するために貧しい村人になりすまし、潜入。そして、ゴアを押収した犯罪組織の逃走、隣町近くに潜んでいるという情報を得て、更にそのスパイとして組織にも潜入したらしい。
 しかし、村人に成りすます為とはいえ、頭にシラミを飼う貴族がどこにいるんだよ。
 さらに、さらに。こいつは俺より年下。13歳だったのだ! 体格が良いため、実年齢では貧しい子供に見えないからと、実際の年齢より3つも上の年齢を言っていたのだ。
 2重スパイと年齢詐称の13歳なんて、ありえない!
 そして、いくら仕方無かったとはいえ、許せないこともある。
 先に威嚇射撃をしてダンを牽制し、被害を最小限に抑えていたというが、軽傷とはいえ、ヨハネは実際に怪我を負っている。
 そして何より、こいつはマルセイユを……。


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