5章〜依頼者との駆引き〜(セイルの章)
取引場所は、例の、隣村の納屋。
2日前の夜、俺達が集まった場所であり、マルセイユが亡くなった場所。
「すまない。待たせたね」
そして、ダンが現れた。彼は、20代にも40代にも見える、年齢不詳の男だ。
「ゴアを用意した」
ヨハネと俺は、胸の前で結び目を解き、粉末いりの袋を包んでいた布を広げた。
「計画は上手くいったようだね。助かったよ」
ダンが粉末に近づいて来ようとしたが、俺は遮った。
「その前に、教えて欲しい。この計画は、俺達以外にも依頼したか?」
「いや? 君たちだけだが?」
「もう一つ。本当に、俺達はお金を貰えるのか?」
「物さえ渡してもらえれば、その後、すぐに支払うよ」
「先に、お金を受け取ることは出来ないのか?」
「……子供は、素直に、大人の言うことに従うべきだと思うがね」
ピリピリと張り詰めたような、不穏な空気が流れた。その時、
「危ない!」
俺は、ヨハネに突き飛ばされた。
その直後、拳銃を発射した音が響いた。
腕を押さえて蹲るヨハネ。そして。
「チョーク?」
俺達に、拳銃を向けて立っているチョークがいた。