4章〜無知の代償〜(セイルの章)

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《4−4》

 その日の夜、ヨハネが俺の家にやってきた。透明の袋と、小麦粉を手にして。
「明日、何も本物を持っていく必要はないだろ?」
 ヨハネと俺は、2人で小麦粉の袋詰めをし、俺が保管庫で見た量とほぼ同量の、"白い粉入りの透明袋"を作成し、荷物に詰めたのだった。

 翌日の朝。
 俺とヨハネが担いできた白い粉の山に、チョークは目を丸くしていた。
「どうしたの、それ?」
「ゴアさ」
 ヨハネは、ニヤリと笑って答えた。
「マルクはまだか? 遅刻なんて珍しい」
 周りをきょろきょろと見回すチョークに、俺はマルクが来ないことを伝えた。
「ああ。チビのマルクは、姉の赤ちゃんの、世話と手伝いもある。昼間は長時間拘束できないから、別の仕事を頼んだんだ」
 そして俺達は、隣村のダンと約束した、取引場所に向かった。

「2週間前、隣村で水講習があることリーダーに伝えたのは、チョークだよな。いったい誰の経由で来た情報?」
 ヨハネが歩きながら、チョークに質問した。
「隣村出身のクラスメイト、パブロだよ」
 チョークの答えに、反応したのは俺。
「なに〜? パブロの奴め。あいつ、人に言っておきながら、自分は来なかったんだぞ」
「自分の家族に幼児が居ないから、関係ないと思ったんじゃねぇの?」
 ヨハネの答えに、俺はビックリして聞いた。
「お前、パブロと親しくはないよな? それなのに、家族構成を知っているのか?」
「クラスメイトなら、全員分。家族構成、出身地は押さえているよ。他の地域から来たやつは、元の出身校も。地図見るのも趣味だし、話をあわせられる。俺が、同じ出身地だと間違われることもあるよ」
「おぉおおお! すげえ。メモを用意するから、今度女子全員の情報教えてくれよ」
 俺が目を輝かせていると、嫌そうな顔をしたチョークが口を挟んだ。
「ストーカーだな」
「ストーカーじゃない。勉強家なんだ」
 そういって、俺は胸を反らした。


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