4章〜無知の代償〜(セイルの章)

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《4−2》

「おーい。マルク、いるかー?」
 荷物を足元に置き、ドンドンとマルク家の木の扉を叩く。すると、バタバタと足音が聞こえて、中から目を真っ赤にしたマルクが飛び出してきた。
「師匠! 死んじゃったんだと思ったよぉおお」
 そう言うと、俺の服に縋ってワンワン泣き出した。
「俺が、死ぬわけがないだろ? お前こそ、無事に逃げられて、良かったよ。怪我は無かったか?」
 うんうん頷くマルクの頭を、よしよしと撫でてやりながら、尋ねる。
「とりあえず、中に入れてくれないか?」
 そして俺達は、買った品を持ってマルクの家に入った。

「師匠、ヨハネ兄貴達を呼んでくるから、待っていてくれよ」
 中に入ったと思ったら、止める間もなく、マルクは家を飛び出して行った。
 夜に会う予定だし、そんなに慌てなくても大丈夫なのに。

「これ、リーダーが窓から投げた物だろ?」
 ヨハネは、例の、ヒビが入って欠けた瓶ごと、ゴアを持参した。あの状況で、この物体を見て俺の気持ちを察するなんて。さすがサブリーダー。俺の行動を読んでいる。
「あーあ、傷こさえて。俺、リーダーの顔、気に入っていたのになぁ」
 ちょっとおどけた口調でヨハネは言うと、傷の痛む右頬に触れてきたので、その手を叩き落とす。
 集まっているのは、ヨハネ、チョーク、そしてマルク、だけ。
 ……マルセイユが居ない。
「マルセイユはどうした?」
 するとマルクは顔をクシャクシャにした。
「マルセイユ兄貴は、死んじゃった、よ」
「え?」
 問いただすように、ヨハネを見ると、硬い表情で補足説明を加えた。
「納屋で、頭から血を流して倒れていたんだ。多分、拳銃」
 すると、それまで黙っていたチョークが口を開いた。
「銃声が聞こえたんだ。最初は爆竹かと思った。笛の音を聞いて、納屋まで戻ったら、マルセイユが倒れていた。俺が行った時は、もう息がなかった」
 そして、締め上げるように、俺の襟首を掴んだ。
「昨夜納屋まで、誰かに付けられていたんだよ。俺は地下道にずっといたんだ。城からは誰も来なかった。なぁ、セイル。この仕事は、危ない仕事なんじゃないのか?! 俺達、大丈夫なのかよ?!」
 ヨハネが俺達の間に割って入って、2人を引き剥がした。
「チョーク、お前も俺も、計画を知った上で、リーダーに反対しなかった。今更リーダーを責めるのは筋違いだ。それより、今後どうするべきか、話し合ったほうがいい」
 俺は頭の中が真っ白なまま、口を開いた。
「頼む、マルセイユのもとへ連れて行ってくれ。マルセイユに会いたい」


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