2章〜城壁内侵入!〜(セイルの章)

←BACK  MENU   NEXT→

《2−3》

 ここは、城壁内、城の北、倉庫前。
 窓から漏れた光で闇夜に浮かび上がった城は、幻想的で、自分たちが忍び込んでいる最中であることを忘れて見入ってしまいそうだ。
 計画は、とても順調だ。
 時々警備兵も見かけるが、小柄な俺達は、広い敷地内では身を隠す木や石に困らない。マルクは所定の位置で待機している。町の方では、時々花火が上がり、夜まで続く喧騒で、素人の俺達がたてる足音も隠してくれる。
 俺の家よりも数倍巨大で立派な保管庫を見上げて、深呼吸する。通気用の隙間を塞ぐ板をずらす。
「行く」
 小さな声でヨハネに告げ、這いずって中に侵入した。

 倉庫の床下は、地面から床まで予想以上に高さがあり、俺程度の体の大きさなら思っていたより動ける。ざっと全体を見回した。月明かりと思える僅かな光が漏れている場所を確認。柱を避けながら近づく。物に塞がれてないのだろう。隙間にナイフを通して泥等を取り除く。下から板を押してみる。……動かない。釘で打ちつけてあるのかもしれない。ちょっと力を込める。グッと板が持ち上がる。簡単に外せたぞ? はめ板だったのかな? そこから顔を覗かせる。隙間なく物が置かれ、所狭しと箱や瓶が並んでいる。天井まで続く棚が見える。何も物音はしない。大丈夫だ。人影は見えない。
「よっ」
 床下からよじ登って、倉内部に侵入。持参した蝋燭に火を灯した。一つ一つに札が付けられており、名称、種類、管理番号、到着年月日、国名、中身の目視確認の有無、検査員名などなど、様々な情報が記載されている。簡易チェックでも、基本的な確認はしているんだな。今回の贈答品は凄い量だったはずなのに。爆発物も入っていることもあるのかな。安全・物品管理の、検閲の仕事は大変だ。
 でも物探しをする俺には有難い。
「ジルラ国、……あった」
 大きな立て札が見える。その奥に、ルベル国の立て札。ジルラ国より1日早く到着した国だ。中央街道を通る、騎馬や馬車、隊列を組んで歩く兵の姿を、両脇を埋め尽くす人々に混じって、俺も友と共に見た。贈り物は大分片付けられているようで、残りわずかだ。一日遅かったら、ジルラ国の品も片付けられていたかもしれない。
「ゴア、ゴア、、、」
 名札を確認しながら、ゆっくりと歩き出す。通路の端まできて、複数の透明の袋に入った白色の粉が目に入った。
「見つけた」
 しかし、薬草と聞いていたのに、粉末? ま、いいか。

 名札を確認し、ゴアを取ろうと手を伸ばした、……その時。
 右の頬に冷たく硬い物が触れた。
「動くな」
 頬に痛みが走った。

 後ろに誰かが居る!


←BACK  MENU   NEXT→