2章〜城壁内侵入!〜(セイルの章)

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《2−2》

 この集合場所の納屋は、秘密の地下通路の入り口だ。城北の保管庫裏へ直通している。俺の手元には地下通路の地図がある。
 まず俺が、壊れた窓から納屋に侵入した。中には暖炉がある。格子を外して暖炉の中を覗き込むと、地下に続く穴があり、縄梯子がかけられていた。縄は新しい。最近誰かが出入りした形跡だ。仕事の依頼人が下見に行ったのかもしれない。
 俺自身も、昨日確認のため、通路を抜けて城の保管庫まで行ってきた。

 全員納屋に入ると、俺は最終確認を始めた。
「まずは、今回の計画の役割分担確認だ。マルセイユ」
「は、、、はいぃぃっ。」
「お前は、納屋で入り口警備の見張り・兼薬草の保管役だ。薬草を手に入れたら家に直帰して明日まで保管してくれ。そしてチョーク」
「へいへい」
「地下道内で待機。上から投げた薬草袋を受け取り、マルセイユに渡してくれ。その後は、自由だ。そしてヨハネ」
「俺は保管庫前だよね?」
「そう。保管庫での見張り役だ。保管庫の裏の壁に子供が入れる広さの通気用の隙間があるんだ。そこから俺は侵入する。警備兵に見つからないように待機して、薬草を受け取ってくれ。そして、地下道のチョークに投げ渡した後、南にある地下道から逃げてくれ。南の地下道への地図は持っているよな?」
 ヨハネはニヤリと笑い、ポケットから取り出した地図をヒラヒラとふってみせた。
 その時俺は、クイクイと髪を引っ張られた。マルクだ。
「ねぇねぇ。僕の確認も。」
「マルク。お前は通路の見張りだ。保管庫近くを通っている、パーティー会場と来賓客宿泊所を繋ぐ通路。万一来賓や警備兵が倉庫へ近づいて来たら、フクロウの鳴きまねをして報せてくれ。全てが終わったら、フクロウの鳴き声で俺が合図を送る。その後ヨハネと同じく南の地下道から逃げてくれ。お前も、南の地下道の地図を持ってきたよな」
「うん。王后様が、通路を通るといいな♪」
 マルクはうきうきした顔をしている。
 そして俺は、全員に笛と蝋燭、マッチを皆に手渡した。これはダンから受け取ったアイテムだ。
「緊急時には笛を吹いて報せろ。万一姿が見つかっても、物さえ持ってなければ『姫様をひと目見たかった』の言い逃れで、刑は軽くなると思う。リレー形式で迅速に薬草の受け渡しを完了して欲しい。何か確認したいことは?」
 するとマルセイユが、おどおどした口調で聞いてきた。
「や、薬草の保管って、どうすればいいの? 光に当てたら駄目? 要冷蔵とか?」
「見つからない場所なら、どこでもいいよ。注意は受けてないし。明日の夜、もう一度この時間、この場所に、全員集合。その時、俺が薬草を引き取るよ。明後日、金が手に入るはずだから。」
 次にヨハネが確認してきた。
「時間制限は? 目的の薬草がすぐに見つかるとは限らないだろ。」
「夜明け前まで。待機場所を放棄して逃げる時は、余裕があれば笛を鳴らしてくれ。笛が鳴ったら、全員、保身第一で逃げること。緊急時以外は絶対に笛を吹くなよ?」
 するとヨハネは、俺の目を見ながら言った。
「余り遅くなるようなら、俺も保管庫に侵入する。リーダーの補助に入るよ。夜中は人の出入りも減るだろうし、保管庫前の番はマルクと交代する」
「わかった」

 そして俺とマルク、ヨハネは、黒のニット帽を被り、手袋をはめた。既に、顔には靴墨で塗りたくってある。準備OK。人相もわからない、全身目立たない黒衣装だが、捕まった時に本当に言い逃れできるか怪しい限り、ではある。
 チョークが松明に火をつけ、俺達は地下通路への侵入を開始した。


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