2章〜城壁内侵入!〜(セイルの章)
その日の夜。
俺達は、隣村の納屋の前に集まった。
メンバーは、俺セイル。
そしてヨハネ14歳、チョーク16歳、マルク12歳、マルセイユ13歳、の5名。
皆、目立たないよう汚れた暗褐色の農作業着で揃えている。マルク以外は皆同級生だ。貧乏人の子は体も小さいし、親に生活の余裕が出来てから通わせることも多い。休学も多いし、労働で疲れて宿題や予習復習も疎かになり、落第する子も多い。だから同じ学年でも年齢にバラつきがあり、学年が上がるごとに同一学年内の年齢差は拡大する傾向にある。
「ほ、本当に、うまくいくの、かな」
マルセイユは落ち着きなく周りを見回して、オドオドした口調で言った。マルセイユはぽっちゃりした外見をしている。肥満ではない。むくんでいるのだ。ジャガイモしか食べていないため、栄養が偏っており、若いのに肌の張りは悪く、指で押すと凹んだまま跳ね返ってこない。クワシオルコルという病気らしい。
「案ずるより産むがやすし」
これは、ヨハネ。体は痩せているのに、お腹だけがポッコリ飛び出している。臓器の肥大によるものか、虫を腹に飼っているからかは不明。俺達の中では、一番しっかりしていて気が利くし、頼りになる。グループのサブリーダーだ。
「これが成功すれば大金が手に入るんだ。やる価値はあるさ」
と、チョーク。ボリボリ頭を掻き続けているが、頭皮の油でベッタリとした頭からは、余りフケは飛んでこない。彼はシラミを飼っており、いつも頭を掻いている。水浴び嫌いで、体からプスプスと臭いがする。貧しいとはいえ、10歳以下の子供はともかく、物心ついた年で風呂嫌いは、川に近いここでは希少な存在だ。
シラミは卵を産み付けられなければ繁殖しないので、毎日川で水浴びを欠かさない俺は、彼と一緒に居ることは苦にならない。しかし、女性には大問題なようで、彼がいる時は半径5m以内から女性の姿が消えうせる。女友達が多い俺には、驚きの存在だ。
「皆、ありがとう」
ちょっと目をウルませて、愛弟子マルクは言った。